看護師お役立ちブログ
アメリカ看護師ーユニオン (労働組合) ってなに?
12.08.2025 | アメリカの看護師情報

はじめに
医療の世界で、「看護師不足」「過重労働」「患者ケアの質の低下」といった課題が注目されるなか、アメリカでは看護師・医療従事者が “ユニオン (労働組合)” を通じて労働条件や賃金、患者ケアの質の改善をめざす動きが活発です。 今回は、アメリカにおける看護師ユニオンの概要、特徴、近年の動きについてご紹介します。
アメリカの看護師ユニオンとはなに?
ユニオン(労働組合)の基本
- アメリカにおいても、看護師・医療専門職が自らの労働条件 (賃金・勤務時間・福利厚生など) を改善するため、労働組合 (ユニオン) を組んで活動しています。
- ユニオン (労働組合) が、看護師や、その他の医療従事者を代表して、個々の医療施設の経営陣と団体交渉を行います。
- 看護師ユニオンは「賃金を上げる」「人員配置を改善する」「患者ケアの安全性・質を守る」「労働者としての声 (意思決定参加) を持つ」といった目的を掲げることが多いです。
アメリカ独特のポイント
- 日本と異なる点として、アメリカでは「団体交渉」「ストライキ」が比較的認知されており、ユニオンの交渉力・行動力が活発であることが挙げられます。
- ただし、州ごと・職種ごと・施設ごとにユニオンの有無・力の強さは大きく異なります。
- 加えて、医療・看護現場では「安全な人員配置」や「看護師と患者の比率)」が大きな争点になっており、単なる賃上げだけではなく「ケアの質を守るための条件改善」が重要なテーマです。
看護師ユニオンのメリットとデメリット
メリット
- 団結して交渉することで、個々の労働者よりも大きな影響力を持てる。
- ユニオンがあることで、賃金だけでなく「勤務環境」「安全基準」「声を出しやすい体制」を提案・改善しやすい。
- 患者ケアの安全・質維持という視点も、ユニオン運動の中で訴えられており、看護師としての職業的使命ともリンクしやすい。
- 雇用の保障:正当な理由のない解雇は禁じられており、看護師の賃金と福利厚生は保護されています。また、組合契約では勤務時間に基づく昇給が保証されているため、組合員の看護師はマネージメントに昇給を求める必要がありません。
デメリット・注意点
- ユニオン活動 (特にストライキ) には、賃金をもらえない日数や、勤務中断などのリスクも伴う。
- 医療機関によっては、代替スタッフ・臨時要員を用意しており、ユニオンの要求が全て通るわけではない。
- 悪い人材を解雇するのは難しい場合がある。雇用安定を促進するための組合の取り組みは、時に、看護師の不正行為や能力不足などの悪い人材にもかかわらず、解雇することが困難になる場合があります。
最近の大きな動き
最近の大きな動きとして、Kaiser Permanente でのストライキがありました。
- アメリカ西海岸を中心に、30,000 人以上の看護師および医療従事者が、賃金と人員配置の改善を求めて5日間のストライキを行いました。
- 対象は、カリフォルニア州、オレゴン州、ハワイ州の多数の施設に及びました。
- ユニオンは、インフレ率に見合うよう4年間で25%の賃上げを求め、Kaiser Permanent 側は、21.5%の賃上げを提示しました。
- ユニオンは、看護師―患者の比率や人員不足が患者ケアの質に影響している、また人員不足が職員の燃え尽き症候群につながる、と主張。
この動きは、規模が非常に大きく、看護師・医療専門職が集団として強いメッセージを出した点が特徴です。今後の改善が注目されます。
まとめ
ユニオンとはなにか、加入するメリット、デメリット、そして最近の大きな動きとして Kaiser Permanent のストライキについてまとめました。
アメリカにおける看護師ユニオンの動きは、賃金、働き方・患者ケアの質にまで踏み込んだ議論の場を提供しており、特に今回の Kaiser でのストライキはその象徴的な出来事と言えます。 日本の看護師としても、「自分の働き方/ケアの質をどう守るか」「自分たちの声をどのように職場・制度に反映させるか」という視点で、アメリカの事例からヒントを得ることができるのではないでしょうか。
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